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THE WORST NURSERY TALE

第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで


 ーーボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアー本部。
 日が高く昇った頃に、ベルフェゴールと氷雨はその場所に帰還した。大広間に入ると、見慣れた顔が彼らを出迎える。


「ゔぉおい!!戻ったかァ、目的のブツは手に入れてきたんだろうなあ!?」

「ただいま。すべて問題なく遂行してきたよ」

「よぉし、ご苦労!ガキも一緒だと面倒だったろぉ」

「ううん、ベルはよく働いてたし助かったよ」

「おめーら当人の前でそーゆー会話すんのいい加減やめてくんね?」


 10年前から変わらないやり取りにベルフェゴールは心底嫌そうに吐き捨てた。なにより今はガキと呼ばれる年齢でもない。


「なんだァ?今日は随分と機嫌が悪ィじゃねぇか」

「あっ、スクアーロだめっ……」

「だってコイツがキスさせてくんねーんだもん」


 氷雨の制止も虚しく、いけしゃあしゃあと不機嫌の理由をベルフェゴールは口に出す。
 ピシッ、と一瞬でその場が凍った。「藪蛇でしたねー、スクアーロ隊長ー」と間延びしたフランの声が追い打ちのようにスクアーロの後頭部に刺さる。わなわなとその肩は怒りに震えていた。


「テメーら、状況を考えろと言ったろおおおがあァ!!」


 鼓膜を突き破るような大声に、氷雨は思わず両手で耳を塞いだ。


「な、なんで私まで……」

「連帯責任だ、バカップル!!責任とって今すぐ別れろぉ!!!」

「ししっ、やーだねっ」


 ベルフェゴールは、背後から氷雨の腰に腕を回して抱え込むと一歩後ろに飛び退いて、スクアーロの剣尖を避けた。恋人を守る行動…と取れば聞こえはいいが、忘れてはならない。この状況の元凶は、ベルフェゴール本人である。


「つーわけで、任務も終わったことだし、オレらちょっと抜けるから」

「ベル……最初からそれが狙いね?」

「さーあ?どーだろね」


 相変わらずの表情で笑っているベルフェゴールの本心は氷雨にも読めない。ただ、ここまでがスクアーロと自分に対する盛大な嫌がらせだということまでは分かった。
 氷雨は、これ見よがしにため息を吐き出すと、己を抱えている男の腕からするりと抜け出した。

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