第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで
氷雨の振り上げた左手が、その頬をしたたか打った。
「いでっ!!何すんだテメー!?」
「こっちの台詞!状況考えてよもう!」
ようやくベルフェゴールの腕から抜け出した氷雨は、助手席のドアを開けて「乗って」と有無を言わさぬ声で告げ、自分は運転席へと向かった。
ベルフェゴールは、片手で叩かれた頬をさすりながら助手席へと乗り込む。
「かっわいくねーの」
「口閉じててね。ちょっと飛ばすよ!」
氷雨は、アクセルを勢いよく踏み込んだ。ぜんぜん、まったく、ちょっとなんてものではない。
ーーベルに赤くなった頬を気づかれませんように!
そう祈りながら、彼女はヴァリアーのアジトまでの道のりを全力疾走で飛び出したのであった。