第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで
日の落ちた市街地を一台の車が走り抜ける。道行く人々は、高級車の黒いボディを一瞬目で追って、再び日常へと帰っていく。
その助手席に座ったベルフェゴールは、タブレット端末を操作してボンゴレ本部の情報を調べていた。
「落ちたボンゴレ本部まわりの調査なんてダリーと思ってたけど、こんな早く次の任務に繋がるとはね」
「ボスの事だから、こうなる事は予期してたのかもねぇ」
「まー、昔からボンゴレはアテになんねーもんな」
ボンゴレの人間としては、耳が痛いことこの上ない。氷雨は誤魔化すようにアクセルを踏み込んだ。
イタリア郊外の森の中まで辿り着く頃には、すっかり真夜中になっていた。
車を物陰に駐めて二人が降りると、闇夜の向こうにそびえ立つ黒い建物が見える。ミルフィオーレに占拠されたその場所には、時折ちらちらと炎らしき灯りが揺らめいていた。おそらく見張りがいるのだろう。
ベルフェゴールは、銀のナイフを片手で弄びながら同行者を振り返った。
「さって、ボンゴレ代表のおねーさん。段取りは?」
「こんな時だけ年上扱いして……。まず、コンピュータルームと警備システムを同時に獲る。その後はお目当てのデータを抜き取るまで陽動役が時間稼ぎ……が妥当かな」
「敵中突破イヤがってたわりにシンプルな作戦じゃん」
「私とベルだけだしね。霧系の術士がいれば、もう少し考えるんだけど」
「こっちに回す余裕ねーんだろな。ウチもだーいぶ下っ端殺られたし」
「仕事は増えてるのにねぇ」
嘆いていても仕方がないとわかっていながら、氷雨は溜息を抑えきれなかった。技術進化、リングの炎、匣兵器……戦い方の急激な変化は、不確定要素を積み上げる。それらをすべてブチ壊して任務を完遂するのが、ヴァリアーであると言われれば、それまでなのだが。
「順当に行くと、オレが警備システムと陽動か。ま、機械相手にするよかマシだな」
「20分……ううん、15分あれば、データは持ち出せると思う。よろしくね」
「ししっ、のんびりやんなよ。適当に遊んでるからさ」
ベルフェゴールはニヤリと笑う。
その言葉が気遣いから放たれてるわけではないことは、氷雨もよくわかっていた。