第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで
ボンゴレファミリーは、10000近い組織を傘下に置く超巨大マフィアグループだ。首脳と呼べるレベルの組織に限っても両手両足を並べても足りない数になる。その上、世界中に組織が散らばっているため、首脳会議を執り行うのであれば通信会議にする他ない。
現状で課題になるのは、主に二点だった。
一点目は、通信セキュリティの確保。ミルフィオーレが通信技術面に置いても高いスキルを有している事は、これまでの調査と被害で判明している。彼らに傍受されずに通信会議を行えるだけのセキュリティを確保しなければ首脳会議自体の価値がなくなる。
だが、これ自体は十分対応可能な課題だ。ヴァリアーはボンゴレとは別に独自のネットワークと通信環境を整えている。元々独立暗殺部隊という組織の特性上、機密保持には力を注いでおり、現時点でもミルフィオーレに情報が流れた形跡はない。ヴァリアーの通信セキュリティを土台にすれば凡そ問題はないだろう。
それよりも課題として重いのは、二点目である通信ネットワークの構築だ。
ヴァリアーのネットワークには、ボンゴレの首脳ファミリーの中でも更に中枢部を担う組織しか組み込まれていない。機密保持を確実なものとする為の措置だ。
ボンゴレ本部の陥落と共に、彼らが有していた全世界へのネットワークが失われたとなれば、再構築には相当な時間がかかる。こればかりは避けようがない。普通ならば、と前置きが付くけれど。
「まさかとは思うけど…」
『察しがいいなァ。そのまさかだ』
「やっぱり!」
頭を抱える氷雨を、隣のベルフェゴールが小突いた。説明しろ、とその肘が訴えているのが聞こえた気がした。
彼女は、遠い目をしながら口を開く。
「……ネットワークを構築する"材料"をボンゴレ本部からくすねて来い、って仕事だよ」
「本部はミルフィオーレの手に渡ったんじゃねーの?」
「うん。でもメインのデータベースは壊されてないと思う。あの情報はミルフィオーレにとっても有用なはずだから」
「既に抜き取られてる可能性は?」
「あり得る。けど、可能性は低い。データベースのセキュリティ構築には私も立ち会ったけど、正直ヴァリアーのセキュリティも超えるレベルの代物だよ。玄人でもこの期間じゃ扱えない」
「ふーん。で、おまえは解除の方法知ってるわけね」
