第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで
ヴァリアーに日常が戻ってきた。それは忙しなく血生臭い日々だったが、ボンゴレ本部に閉じ込められていたときと比べれば、何倍もマシだと幹部の誰もが思っている。
第二次クーデターが失敗に終わったことで、ヴァリアーの人員は幾分か減っていた。命令だからついてきたもののもう付き合いきれない。そう思った隊員がいても何ら不思議はない。そう思う様な輩は幹部の者たちが帰ってくる前にそそくさと荷物をまとめて出ていった。
「ねえスクアーロ、マリスも辞めたのかな」
「マリス?ああ、あいつかぁ。あいつはXANXUSが辞めさせたんだ」
「え、そうなの?なんで?」
氷雨はテーブルに向かい書類にペンを走らせる手を止めないままでスクアーロに問いかけた。視線も書類に向けられたままである。
スクアーロはソファに座って自慢の剣の手入れをしながら、大して興味がない様子で答えた。こちらも視線は剣に向けられたままだ。
「さあなぁ。気付いたらクビになってやがった」
「ええぇ……仕事できる人だったのになー」
「ボスさんの逆鱗にでも触れたのかもなぁ。まあ諦めろぉ」
「残念……」
氷雨はため息を吐きながらも、一枚の書類を完成させると上から下まで目を通してから脇に除ける。そして二枚目の書類に取りかかり始めた。スクアーロも剣の手入れをしているため、それ以降はお互いに無言の時間が過ぎる。
暫く時間が経った頃、バタバタと騒がしい足音が談話室に近付いてきた。ガタっと音を立ててドアが開く。
「氷雨いる?」
「いるよ」
「なんだよ、まだ仕事してんの?」
「ごめんね。まだやってる」
現れたのはベルフェゴールだった。氷雨が書類と格闘していることを察すると、面白くなさそうな顔をする。彼はスクアーロの前を横切って談話室に備え付けられた冷蔵庫のもとまで歩いていくと、中から牛乳を取りだす。それを持ってまた移動すると、氷雨の向かいにある椅子に腰を下ろした。