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THE WORST NURSERY TALE

第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで


 抱きしめられた氷雨も相当困惑しているようで「る、ルッス姉さん?」と素っ頓狂な声を上げている。


「……ありがと、また会えて嬉しいわ」

「……姉さん……」

「なあ、どーいうこと」

「僕に聞かないでよ」


 目の前で繰り広げられている感動シーンっぽいものにベルフェゴールはついていけていない。未だにピクピクと顔を引きつらせながら、なんとか平静を保とうとしてマーモンに問いかける。マーモンは興味がなさそうな様子でそれを一刀両断した。
 ドカドカと盛大な足音を響かせて、廊下の向こうから誰かが歩いてきた。先程XANXUSについていったスクアーロだ。こちらの様子を見に来たらしい彼は、ルッスーリアと氷雨が抱き合っている光景を見て一瞬ぎょっとしたものの「あ゛ー…」となんとも言えない様な声を上げながら二人に歩み寄ると、片手で氷雨の頭をぽんぽんと撫でた。相変わらず手つきは雑である。


「まあ、なんだぁ……頑張ったなぁ、氷雨」

「…っ…スクアーロ……!」

「なあ、マジでなんなのコレ」

「自分で考えなよ」


 ベルフェゴールの声には微かな苛立ちが混じり始めている。マーモンはため息を吐いた。
 そのとき、氷雨がギブアップとばかりにルッスーリアの腕をぱしぱし叩いた。ルッスーリアが腕を解くと、氷雨はくるりと振り返ってベルフェゴールに視線を向ける。既に不機嫌な少年はそれを隠そうともしない。だが、氷雨はそんな少年に向けて、満面の笑みを浮かべた。


「ベルくん。傍にいる約束、守ったよ」

「……ばーか。約束じゃなくて命令っつったろ」


 まあ及第点、と言って彼女の額にデコピンを食らわしたベルフェゴールは満足そうに口元に弧を描く。氷雨は痛そうな様子で額を擦るものの、またへらりと笑った。
 そんな二人の様子を見守りながら、他の三人は複雑そうな顔をするのであった。
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