第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで
マーモンの頑張りのおかげで、車内ではナイフが飛ばなかったものの到着して車を降りるなり、ベルフェゴールは懐に忍ばせていたナイフを投擲した。目標は当然ルッスーリアである。いやーん、と声を上げながらも初撃を難なく避けるルッスーリア。目標を見失ったナイフは、先に降車していたスクアーロのもとに飛んでいく。
「う゛お゛ぉおい!!なにやってんだてめぇらぁああぁ」
「オカマを抹殺しようとしてんだけどなに?」
「なに、じゃねぇ!やめろ!」
「ししし、スクアーロ如きが王子に命令なんて出来ると思ってんの?」
そう言いながら、ベルフェゴールはまたルッスーリアに向かってナイフを投げる。射程にXANXUSが入らないよう計算して立ち回っているいるところがなんともタチが悪い。彼らを降ろした車は、さっさとUターンをして去っていった。
スクアーロはベルフェゴールを止めようとして声を荒げるものの効果はない。それどころか、XANXUSが「うるせぇ」と言いながら、その辺にあった鉢植えを投げてくる始末である。
「死ねよ、変態」
「せっかく繋いでもらった命だものー。そう簡単にはあげられないわぁ」
「クソボスがぁ!なんで俺に投げるんだぁあ」
「テメェが一番うるせぇ」
「ボスの仰る通りだ」
「じゃあてめぇが止めろ、レヴィ!」
「俺は奴らの争いなど興味がない」
マーモンは、とばっちりを受けないように彼らから距離を置きつつ「やれやれ」と呟いた。これでは軟禁される前とまったく変わった様子がない。自分たちにとっては幸運だったとはいえ、9代目と門外顧問の判断には誤りがあったとしか思えない。
「さあ、ボス。我らのアジトに帰還しま………ゴフッ!?」
「!?」
ようやく玄関の扉に辿り着いたところで、レヴィがXANXUSのために扉を開こうと一歩前に出ると、外開きの扉は勝手に開いて彼の額にクリーンヒットした。タイミングが悪いにも程がある。
「なーにやってんだか」と言ってまた新しいナイフを投げながら、ベルフェゴールは扉へ視線を向ける。そして開いた扉の先を見た瞬間、自分の目を疑った。それは、そこにいない“はず”の人物だ。
「久しぶり、みんな。おかえりなさい!」
彼らがよく知る黒髪の女性は、にっこりと笑っていた。
そして再び幕は上がる