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THE WORST NURSERY TALE

第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで


「じゃあ聞くけど。君はどうしてそこまでするんだい」


 言葉をなくしたベルフェゴールを一瞥すると「とばっちりはごめんだよ」と淡々とした声でマーモンは続けた。ベルフェゴールの隣でルッスーリアはマーモンを咎めるように声を上げる。金にならない面倒事はもっとごめんだ、とマーモンは思った。
 ベルフェゴールは片膝を立ててそこに頭を乗せるように俯くと暫く黙り込んだ。


「……オレだって、おかしいことはわかってんだよ」

「ベルちゃん……」

「ゲームは他のをやりゃいいし、服は代えがいくらでもあるし、牛乳も寿司も新しいの買ってくりゃ済む話だろ」

「ベル、何の話?」

「は?氷雨の話をしてたじゃん」


 さも当然のようにベルフェゴールは言うが、その他二人はぽかんとしていた。彼の言い分は間違っていない。たしかに氷雨の話をしていた。しかし、少年の口から出てきたのは、ゲームだの服だの牛乳だの凡そ人間の話をするには似つかわしくない内容である。
 二人の困惑を余所に、ベルフェゴールは顔を上げるとシートに背を預ける。前髪に隠れた瞳は何処か遠くを見ているようで。


「遊び相手だって他にいくらでも調達できんのに、なんであいつじゃなきゃダメって思うんだろーな」


 らしくねー、と言って、ベルフェゴールは苛立ったようにガリガリと頭を掻いた。自分の不可解な欲求を持て余しているようだった。
 やれやれとマーモンはため息を吐く。マーモンが口を開こうとしたその時、ものすごい勢いでルッスーリアがベルフェゴールの手を掴む。予期していなかった事態に少年はびくっと跳ねあがった。


「なにすんだ離せ変態!!」

「もーベルちゃんったら!いじらしい!!」

「はあ!?いいから離せっつってんだよ」

「いいわあ。好みとはちょっと違うけど、ときめいちゃうわ~」

「なに勝手にときめいてんだてめー気持ちわりーな離せよ殺すぞ」

「素直になれない困ったちゃんなんだから☆」

「よーし素直にサボテンけってーい」

「車内ではやめなよ、ベル」

「止めんな。どー見てもカマのが悪いだろ」

「僕はとばっちりを食うのは、ごめんだ」

「クソガキ」


 それから、ぎゃあぎゃあと騒いでいるうちに車はヴァリアーのアジトに到着してしまった。
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