第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
「……悪いな。5年前に手を打っておければ、こうはならなかった」
「過ぎたことです。もう気にしていません」
事実だった。氷雨は今になって、己の異質さを再認識したけれども、それを恨めしいとは思わなかった。すべてが悪い方向に進んでしまったというならば、ただそれだけの話だったのだろう。終わったことは取り戻せない。ほんの数日前に、彼女はそれを教わった。大切なのは、これからどうするつもりか、だ。
「リボーンさん」
「なんだ?」
「謝って下さるより、協力してくれませんか?」
「……オレは高いぞ?」
「そちらの条件も出来るだけのみます」
「内容を先に聞く。判断はそれからだ」
口調こそ素っ気ないもののリボーンは満更ではなさそうである。きちんと話を聞く気はあるらしい。
氷雨は安心したように微笑むと、おもむろに口を開いた。
「私の望みはひとつだけ。それは、――――」