第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
「……自分で考えることを、教えてくれた人達がいたので」
氷雨はニッコリと綺麗な笑みを浮かべた。
様々な厳しさと優しさを教えてくれる中で、彼らは決して“答え”を彼女に与えなかった。どうするべきか、どうしたいのか。目的の決まっている任務のときとは違う。目の前には無数の選択肢が転がっている。ただ、ひたすらに己の道を進んでいく彼らの生き方が、氷雨にその選択肢の存在をようやく気付かせた。今まで親の決定や上司の決定に従って生きるだけであった、彼女に。
リボーンは氷雨の返答を聞くと満足そうに笑って口を開く。
「成長したな」
「そうだといいんですが。遅すぎる気もします」
「速度なんて関係ねぇ。気付けるか気付けないか、だ」
「そうでしょうか」
「ああ。お前も、ツナのファミリーにならねーか?」
「え。……っまさか……!?」
氷雨は、一瞬きょとんとした後に未だベッドで眠っている少年へ驚きの目を向けた。リボーンがここにいることも考えれば、ありえない話ではない。こうも易々と寝首をかけそうな状況になることが出来るとは彼女も思っていなかった。
リボーンは彼女の反応を見ると、楽しそうな声で「そのまさかだぞ」と言う。彼女の予想は当たっていたようだ。
「彼が沢田綱吉……!」
「ああ、こいつがツナだ」
「……本当にXANXUSを倒したんですか?」
「本当だぞ。信じられねーだろうけどな」
リボーンは何処までも楽しそうに話す。彼が言うように氷雨は信じられなかった。年端もいかない子どもである。しかも彼女の気配にもまったく気付かずに熟睡しているとは不用心にもほどがある。XANXUSが相手であれば、いくら気配を消したところで一瞬でかっ消されることが氷雨には容易に想像が付く。
ひとまず、沢田綱吉の話をここでしても仕方がないと思って氷雨は軽く咳払いをした。気を取り直さなければ。
「ファミリーとは、どういうことですか」
「そのままの意味だ。守護者は無理だがファミリーは多いに越したことねーからな」
「私、コメータファミリーの人間なんですけど」
「ランボはボヴィーノの人間だしな」
「そうなんですか…」
すげー出世だぞ、と言ってリボーンは笑う。確かにその通りだと氷雨も思った。