第9章 【黄泉の国へ※】
「じゃあ、帰ろうか」
白蛇さんはそう言うと、私の襟を直す。体が自由になり直したつもりだったが、どうやら肌蹴ていたようだ。
軽々と横抱きし、軍服の人たちに後のことは頼み帰路に着いた。
その間、開放された安心からか、白蛇さんの体に身を任せ気が抜けるように眠ってしまった。
「ーー?」
「っんんー?」
心地よい微睡みから、白蛇さんの声が響く。優しくて、透き通っていて、安心できる声。
半分夢心地な気分で薄っすらと目を開ける。そこはもう屋敷の敷地内だった。
「汗とか嫌なものが付いただろ?先にお風呂に入るかい?」
寝ぼけている私はとんでもないことを言った。
「入り、ます。白蛇さんと……」
「おやおや、積極的だね。そう言わずとも入れてあげたのに」
いつも通りの白蛇さんの口調だが、心配していると話し方と、触れ方で精一杯に伝わってくる。
奥から晃くんが小走りで駆け寄ってくるのが見えた。
「あっ!おかえりなさいま……せ。……ど、どうされたのですか!」
私の状態を見て、晃くんの表情にも焦りが生まれる。
「ちょうど良かった。晃、湯の準備を頼めるかい?」
察したのか、晃くんは慌てながらお風呂場へと駆けて行った。