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白蛇さんに捕まりました!!

第5章 不安と混乱。



数十分考えこむ。

白蛇さんの言った通りなら、帰れたとしても私の存在はない。きっと親からも怪訝な目で見られるに決まっている。
友達だってそうだ……千代もきっと。
そんな視線を受けてしまったら、と考えると身震いがする。

悩んだ末に、案外簡単に答えが出た。


(やっぱり、こっちで暮らそう……)


あの白蛇さんと結婚?といういわくつきではあるけれど。
別に思い残しがないわけでない。将来は就きたい職で働きたかった。けれど、それを簡単に捨てた自分に、ひどく驚いたと同時に自分自身を嘲笑った。


決まった途端に、肩の荷が降りたのか心が落ち着いてきた。
暫く、丸窓から見える庭を見ているときのこと。

「失礼します」

障子の向こうから声を掛けられる。声からするに晃くんだろうか。

「どうぞ?」

障子が開き、晃くんの表情が曇っていた。

「様、ご気分は如何でしょうか?」

自分も仕えている人……白蛇さんに、散々振り回されているであろう晃くんは、人にましてや会ったばかりの人にも、気を配れるなんてと関心した。

「あ……うん。そのことなんだけどね、ここに住むことに決めたの、私……」

「それは……誠でしょうか?」

昨晩の泣き様を見て、心配とは裏腹に疑っているのだろうか。
だよね、昨日散々部屋で泣いてたし、きっと聴こえていたはず。

「うん、だから宜しくね晃くん!」

そう言うと、表情が晴れていく晃くんが見えた。重荷になっていたようだ。晴れを通り越して、泣きそうな表情になっているけど。

「うっ……ぐすっ。すみません……もしも、様が本当にお帰りになりたいと申されましたら、どうしようかと……」

晃くんを慰めるのに数分かかったのだった。

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