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生贄のプリンセス【Fischer's】

第2章 出会い


「……私、死ぬの?」
__ザァッと、大粒の雨が降った。
じり、と 小石を踏み躙る音が いつもより何倍も大きく聞こえる。

後ろを向けば、針が突き出す針地獄へと真っ逆さま。
死ぬの?なんて、何回思っただろうか。


私の故郷〝アルディ村〟の、今年の生贄は 去年、ウィズドム子として作られ、学校に通っていれば高2の私だった。

「……皆、黙ってたなんて酷いね」

すべてを教えてもらったのは、たった数分前。
……乾いた笑いしか、出なかった。
そもそもここに生まれてきたのが、間違いだったかもしれない。
こんな結果になるならば、生まれてこなかった方が良かったかもしれない。

全部が嫌に思えた。
皆この村の為だけに私を育てていたんだ。
じゃあ、あの言葉も、あの優しさも、あの愛も___
全部嘘だったんだ。


「…恋奈、真実を受け入れろ」
宗馬が、唇を噛み締めながら私の方を見つめた。
〝私に死なれるのが嫌なら、私を助けて〟そう叫んだって何も変わらない。

結局、ここから逃れる方法は一つもない。
上がっては下がりの繰り返しをした終着点は、もう呆れ返っていた。

「真実? あぁ、これが真実だよ?
でも、真実を皆公表しようとはしない……どうして?」
目の前に広がる針が突き出した谷の景色を眺めながら言った。

そうか、これが真実か。



「残酷な真実だね」



大粒の雨で濡れているのか、はたまた涙で濡れているのか…
それすらも分からないほど、私の顔はぐちゃぐちゃになっていて。
もうこのまま死んでも良いんじゃない?なんて、バッカみたい。

お母様との約束も、ここでのルールも、守らなきゃ殺される。
ただそれだけのこと。


それだけの……ことなんだ。



「な、なんだ、あの雲!」
住民の一人が声をあげ、私はパッと空を見上げる。
明らかに、私の頭上の空だけに暗雲が立ち込めていた。

あぁ、私もこの場所も破滅に向かっていく。
他の道なんて、もうとっくに壊されたんだ。

暗雲はどんどん大きくなり、住民達の不安を煽る。
恐れていた言葉は、やがて矢のように飛んできた。
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