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生贄のプリンセス【Fischer's】

第3章 ようこそ、お姫様


普通の私は、普通の彼らは、あくまでも能力を持つ特殊な人間。
世間的には普通じゃなくても、私や彼らにとっては一番の普通だ。

__じゃあ、彼は。
生贄で、能力を持つ私を選んでくれたんだ。
私から見る〝普通の私〟を、他の誰でもない私を、探し当ててくれたんだ。


私は選ばれた。
彼らの出した答えが分かった今、胸を張って言える。

「姫に……なりたい」

私は姫になりたい。
彼らの思う普通でいられるのなら、それが一番幸せだ。
普通の定義も幸せの定義も。
人間は十人十色だというように、全員幸せや普通の度合いも大きさも違う。

それがきっと、答えなんだ。

「……それでいいよ。ありがとう、恋奈」
モトキさんは、またふんわりたんぽぽみたいな笑顔で言う。
シルクさん達も、朗らかで……純情な笑みを、浮かべていた。

「あ! そうだ、あれやろうよ。
姫が来た時にやろう、って言ってたやつ」
ぺけさんが、頭上に電球マークを浮かべたような表情で言うとシルクさんは笑って〝あの需要のないやつな〟と言っていた。

雲がどき、太陽が主役だと胸を張るような 弾けた笑顔を見せる彼ら。
__写真に収めたい、いや、この目に焼き付けておきたい。
レンズ越しじゃ、見えないものだってあるから。


「それじゃあ、やりますかぁ!」
ハッと気付くと、いつしか彼らの笑い声は静かになっていて。
ンダホさんがそう言うと、彼らは私の目の前に跪く。

あっ、と思う暇もなく、彼らの声は息遣い一つ違いなく揃った。


「ようこそ、お姫様」


……私は、今日から姫だ。

__あぁ、また重い肩書きだな。
なんて思う。
その思いを伝えれば、彼らはきっと〝存在が軽けりゃいいだろ〟と笑い飛ばしてくれる事だろう。

ほら、結局。
ノートに書いた重りの絵を、消しゴムで消すくらい簡単に肩書きの重さを減らしてくれる。
……軽い存在があるからかな。
と、私は笑って__


「はい」


彼らの手を、ぎゅっと握るのだった。
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