第14章 暮るる籬や群青の空
社長の指示により、探偵社事務員は県外に退避。そして探偵社調査員たちは急遽全員社屋を発ち、旧晩香堂へと参集された。
会社設立前に社長が拠点にしていた場所であり、極限られた人間しか知らぬ故。拠点を秘匿せねば、数で勝る敵に押し潰される。
此れは戦争の覚悟を決めた、福沢の判断だった。
「皆聞け」
社長の言葉に、社員達はこぞって顔を上げる。
「嘗て―――三日か二日前には戦争を免れる途は在った。しかしその途も今や閉ざされた。社の鏖殺を謀るマフィア、社の簒奪を目論む組合(ギルド)、この両雄より探偵社を守らねばならぬ。太宰、説明を。」
「はあい。」
*
「組合は資金力にマフィアは兵の頭数に優れます。正面からかち合えば探偵社と雖も脳天が弾け飛びます。そこで、我々は人員を守勢と攻勢に分割し、奇襲戦法で姑息に抗います。守勢の要は何と言っても此処で与謝野先生を守る事。先生の治癒能力があれば死なない限り全快出来ますからね」
「うげ…」
「守勢には探偵社で一番戦闘力の高いなまえを配置します。彼女の異能力があれば、大抵の攻撃は防げるからね。」
―――守勢(ディフェンス)
福沢、乱歩、なまえ、与謝野、賢治
「そして、攻勢は二組に分割。谷崎君の隠密能力と、私の異能力無効化で敵の横あいを叩く。」
―――攻勢(オフェンス)「甲」
国木田、谷崎
―――攻勢(オフェンス)「乙」
太宰、敦
「この戦の肝要は、この拠点を隠匿することです。敵の異能者総出で此処に雪崩れ込まれると、いくらなまえが居るからと云っても、さすがに守勢が保ちませんから。」