第13章 The strategy of conflict
「太宰となまえ……其方らに託そう。全く……探偵社に、我が愛しの娘を二人も取られるとはのう。」
『…姐さん…』
「なまえや。これからも、偶に顔を見せに来い。鴎外殿もそれをご所望じゃ。」
『…許されるのなら…。』
「当たり前じゃ。生きる場所は違えど、何時も其方を見守り、愛しておる。それだけは忘れるな。」
『…はい……ありがとうございます……』
「それと……、」
紅葉は、にたりと悪戯に笑いながら、続けた。
「そろそろ中也にも答えてやらぬか。一途に其方を想い続けて、もう何年になると思っておるのじゃ?何時迄も女を知らないマフィア幹部、というのも格好がつかんじゃろう。」
『…え?女を知らない、って真逆彼奴…まだ童貞貫いてるんですか!!?』
*
「……へっくちゅッ」
「おや、中也君。風邪かい?」
「いえ……(誰か噂していやがるな)」
*
「当たり前じゃ。中也をその辺の坊主と一緒にするでないぞ。なまえ、あんなに一途な男は滅多におらぬ。その上金も地位もある。文句なしじゃ。」
―――紅葉は昔から、中也贔屓である。
「ちと身長は小さいがのう…」
『あはは、たしかに!』
「あんまり云うと太宰に怒られそうじゃ。この辺で辞めておこう」
紅葉は言ってから、なまえの頬を優しく撫でる。
「なまえや。これから一悶着ありそうじゃ。あまり無茶はするでないぞ。」
『はい!!』
なまえは、目一杯の笑顔で答えた。
まるで花が咲いた様な笑顔に、紅葉は安堵した様に、幸せそうに、笑った。