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生い立ちの歌《文スト》

第4章 『北の海』





翌日、携帯から流れるアラーム音で中也と泰子は目を覚ました。



「んんー、中也五月蝿い」

「俺じゃねぇ」

「君の携帯なんだから君が五月蝿い」

「意味が解ら無ェ」



回らない頭で会話をしつつ、中也は頭上に置いてある携帯を操作しアラームを止めた。
二度寝を決め込もうと布団を被り直した泰子だったが、中也がそれを阻止した。



「巫山戯んな」

「誰かさんの所為で眠いんだよ」

「手前も乗り気だっただろうが」



仕方が無いといった様子でのそりと泰子も体を起こすと、髪の毛の隙間から昨夜己がつけた噛み跡が中也の目に飛び込んできた。



「......準備してろよ」

「んー」



そう言って中也はベッドから出ると寝室を出て行った。泰子はハンガーにかけられた自分の服に袖を通し、洗面所で顔を洗ってから身支度を始めた。
そして身支度を終える頃、中也は再び寝室を訪れた。



「朝飯食えよ」

「へぇ、料理出来るのかい」

「まぁな。手前どうせ普段朝飯食わ無ェんだろ」

「うん。朝は食べない事が多い」



驚いた表情をしつつ、泰子は中也と寝室を出た。
机にはトースト、サラダ、スクランブルエッグ、ヨーグルト、珈琲という中々豪華で理想的なものが並んでいた。



「こんなまともな朝食久しぶり...頂きます」

「おー」



元々食事に関しては無頓着な彼女は普段から適当に済ませていた為、意外だな、と呟きつつも食事に手をつけた。
朝食と片付けを済ませ、二人は車に乗り込みアジトへと向かう。
二人の執務室の前に着くと、其処には先客がいた。



「あれ、芥川如何したの」

「お早う御座います。首領からお二人へ任務の話があるから部屋に来るようにと」

「へぇ、後で行く。有難う」



其れだけ伝えると芥川は軽く一礼し、二人の横を通り過ぎて行った。



「ずっと部屋の前で待ってたのかな」

「...さぁな」



律儀と言うか不器用と言うか...と泰子は苦笑しながら執務室へ入る。
鞄を置いてから外套を脱ぎ、パソコンの電源をつけてから中也と首領である鷗外の元へ向かった。


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