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生い立ちの歌《文スト》

第3章 『湖上』





月は聴き耳立てるでしょう、
すこしは降りても来るでしょう、
われら接唇する時に
月は頭上にあるでしょう。

あなたはなおも、語るでしょう、
よしないことや拗言や、
洩らさず私は聴くでしょう、
――けれど漕ぐ手はやめないで。

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けましょう、
波はヒタヒタ打つでしょう、
風も少しはあるでしょう。
(中原中也/湖上より)


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