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華の剣士 2 四獣篇

第15章 駆け引き


そこでムニルが手をあげる。あまりそう言ったことに参加する印象がなかったので、ハヨンは少し驚いた。


「それなら相手が山に入るまでに、私が霧を出しておくわ。そうすればあなた達が身を隠しやすいでしょうし。」


リョンヘが首肯く。

「是非そうして欲しい。私たちの手勢は少ない。できるだけ向こうには多いように錯覚して欲しいし、犠牲も少なくしたい。できるだけ、派手な戦にならないようにしたい。私もこの戦での策…というより、方針に対する案があるのだが、聴いてはくれないか。」


その場に居たものは、姿勢を正しリョンヘの方へと向き直る。

「この戦は勝たなくて良い。勝たない代わりに、向こうがやむなく撤退するようにして欲しいのだ。難しいこととはわかっている。だが、何度も言うが私たちは数が少ない。だからできるだけ傷を負わず、相手が逃げ帰る程度に戦って欲しいのだ。向こうが撤退すれば、再び襲撃に来るまでに四獣を探すこともできる。」


少し戸惑っている臣下達の姿を見渡しながらリョンヘは言葉をつぐ。


「そしてもう一つ考えているのは、王城の誰かと繋がりを持ち、王城内での反乱を起こすように頼むのだ。そうすれば相手は内側からも崩壊する。あれは数日にして無理矢理作られた体制だ。今もどこかで歪みがあるはずだ。そこを狙えば機会は生まれる。この戦は次に繋げるための戦だ。命を落とすことだけはするな。これは命令だ。」


「はい…!」


皆がそう力強く返事をする。何もかもが賭けのような策ばかりだが、ハヨン達にある手は少ない。やれることをやるしかないのだ。


「長々と話して悪かったな。それでは他に案のある者は言ってくれ。」


リョンヘの意向を聴いたからか、少し空気が熱を帯び、皆が活気が出たように見える。みな思い思いの意見を述べ始めたのだった。




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