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華の剣士 2 四獣篇

第15章 駆け引き


先日の軍議で、籠城をするつもりは毛頭ないとリョンヘも断言していたが、念のために孟の地の守りを固めておくことにした。戦の日に、敵が二手に別れて城を狙うことも十分有り得るからだ。それに、万が一戦に敗れ、城に逃げ帰ることになれば、第一に孟の民を守らなければならないのだ。

そのためにハヨン達はこの地の群長のもとを訪れ、戦について話をすることにした。
群長とは群の民の中から選ばれる頭である。この国は王が治めるが、国は群に分割され、それぞれを貴族や王族の誰かが代理として治める。しかし、つねに群にいるわけではない貴族では詳細が掴めないこともある。そのため、群長を置いて群長と協力しながら群を治めるのだ。


「わかりました。それでは戦が始まる頃から、兵を増やせるように掛け合いましょう。」


リョンヘ、ハヨン、セチャンの前に跪いている群長は頭を垂れる。


「すまないな、お前達を巻き込んでしまって。」


リョンヘがそう群長に詫びながら、膝立ちになる。群長は畏れ多いのか、床に頭が付きそうな程に頭を深く下げる。


「そう畏まってくれるな。私が孟の地で過ごすようになってから、お前達には苦労をさせている。その事を謝りたいのだから。」


リョンヘは頑なに礼儀を通そうとしている群長の姿から、困ったように目をそらせる。


(リョンヘ様はこういった格式張ったのが嫌いだからな…)


ハヨンはどうしたものかと一向に視線の交わらない二人を見ていた。


「私は…、他の群の男達が根こそぎ徴兵されて行くのを見ました。今、王と成り代わっている者は、きっと国の行く先を深くは考えておらぬのでしょう。ですから、我々を気にかけてくださるリョンヘ様に付いていこうと、孟の民は決めておるのです。」


「それが例え、孟の地を軍勢に取り囲まれ、攻め入られることになってもか?」


「さようでございます。今ではもっとも安全と言われていた城下の街も、不穏な空気が漂い、夜には賊がうろついているのだそうです。今もなお、孟を穏やかに治めてくださるリョンヘ様に、私たちは信じて付いていきたいと思っておるです。」

これはリョンヘにとって思い言葉だったはずだ。リョンヘに付いていけば幸せに暮らせると思われていると言うことである。


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