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華の剣士 2 四獣篇

第15章 駆け引き


「やはりこの蒙に戦を仕掛けるために、城に兵を集めていることがわかった。そこでだ、この戦をどういった策で行うかを皆に問うべきだと思い、こうして集まってもらった。この際、どんな案でも恐れずに言って欲しい。誰も咎めないし、真剣に皆の考えをとりいれようと思う。」


城の大広間には蒙の城で生活を共にする一同が勢揃いしていた。その一人一人の顔を順々に見つめながら、リョンヘがそう重々しく口を開く。


これから始まるのは戦だ。命をかける戦いである。経験をしたことがあるもの、無いものがいたが、揃って緊張した面持ちだった。リョンヘ達一行の手勢はあまりにも少ない。どれ程危険なことか、みな重々承知していた。


たとえ伝説の獣である青龍が力を貸すと名言していても、それは自分達の命の保証や、勝利を意味するわけではないのだ。


その上、相手が戦を仕掛けてくるのは、もう少し向こうの内情も落着き、尚且つそれなりの準備を整えてからだと思っていたので、リョンヘ達もまた、戦を仕掛けられるまでに朱雀と玄武に会えなかった。


要するにかなり危険な戦で賭けに近いのだ。


ハヨン自身も戦に出たことがないし、城でも白虎、つまり王族の守護を主とする部隊に所属していたので、戦に関する知識はまだまだ少ない。昨晩いろいろと作戦を考えてはみたが、どれも現実感がなく、使える作戦なのかわからなかった。


(王城にいたころに、もっと勉強しておけば良かった…。)


寝不足の隈のために、ハヨンの顔は随分と険しそうに見える。


その時、この蒙の面々の中で一番古株であるセチャンが挙手をした。彼は戦の経験もあり、功績もある。


「王城と蒙の間には山があります。そこで山の上から奇襲をかけることを提案します。しかし、そこは敵も警戒しますから、蒙側にある平野に陣をおいているように見せかけて油断させると効果が上がると思われます。ただ、山で我々の陣形が崩れてしまうとかなりの痛手になる点が欠点だとは思いますが…。」

ここには若手の兵士が多いので、ハヨン同様あまり良い策が思い浮かばなかった者が多かったのだろう。所々でほう…といった安堵にも似た息を吐く音が聞こえた。



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