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雪解けの春《アイナナ》

第14章 Episode 13





「あははは!めでたいなぁ!乾杯ー!」

「おわっ、ちょっ、十さん!ビール注ぎすぎ注ぎすぎ!」



いつの間にか完全に出来上がっている龍之介が、大和の制止も聞かず、天にビールを頭から浴びせていた。
うわあ...可哀想。
私は席を立ってタオルを持って来ると、ビールまみれの天を拭いてあげた。



「ありがとうございます、さくらさん...」

「龍之介はいつもこんな感じ?前はここまで酷くなかったような気がするんだけど」

「一度飲むと手がつけられなくて。前回は運が良かっただけです。それより、ちゃんと見ててくれてたんですね。僕のこと」

「もちろん!天かっこよかったよ」

「これからも...」

「あれー、俺のビールが空っぽだ」



天が何かを言いかけた時、龍之介が空のコップを片手に私と天の間に座る。
空になったのは天にかけてしまったからなのだが...。天の冷たい視線にも今の龍之介は動じない。



「あはは、いいよ、龍之介。私がお酌してあげるから飲もう!」

「おお、さくらさんノリがいいなぁ!かんぱーい!」



そうしてビールをどんどん空けていく龍之介に付き合って飲んでいたが、さすが沖縄県民というべきか...。
ハイペースで飲み進める龍之介とは対照的に私はすっかり酔っ払っていた。
少し夜風を浴びようと、私は事務所の外へ出る。



「あーーー、涼しいー」

「風邪ひくよ」

「あー、ユキだぁ」

「いつの間にお酒なんか覚えたの」

「えへへ、私もう24だよー」



最後にユキに会った時はまだ未成年だったっけ。
回らなくなってきた頭で、ぼんやりそんなことを考えていると、ユキは自分が着ていた服を私にかけてくれた。



「折笠千斗くーん、いつの間にこんな紳士的なこと出来るようになったのー」

「なんでフルネームなの。──そうね、モモの影響かな」

「百くんやーさしいもんねー」

「君もね」



なんだかユキに褒められた気がして嬉しくなった私は、横にいるユキにもたれかかった。
ユキは少し驚いた表情をしていたが、拒まずにいてくれた。


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