第13章 Episode 12
「そうしてでも、ユキを守りたかったんだよ。ユキにずっと歌っていて欲しかったんだよ」
「それにな、千。俺はもう自分で歌うことはないけれど、さくらは歌っている」
「え...?」
「Sakuraって知ってる?あれ、私なんだ。昔二流だって言われたのが悔しくて、意地でも歌い続けてやるって、そう決めたの」
「そっか...。さくら...守ってあげられなくて、ごめん。守ってくれて、ありがとう...」
後輩達の目も憚らずにユキは私の手を自身の胸の前に持っていき、抱え込むようにしながらそう言った。
その時、私は自分の頬を涙が伝っていることに気付いた。
「っ...ユキ、ずっと...ずっと応援してたよ...っ!百くん、ユキを...千を救ってくれて、ありがとう...!」
「百くんがいたから、千は音楽を続けてくれたんだ。本当に感謝してるよ。ありがとう」
「ありがとうなんて、そんなっ...」
「万...僕を恨んでないのか...?」
「馬鹿にするなよ?俺をそんな男だと思ってるのか?」
「違う......違う、僕は...」
「わかってるよ。俺とさくらの分も背負って歌ってくれてたんだろう?義理堅い千のことだからさ」
「万とさくらと作ったRe:valeを...この世から消したくなかった...」
耳を澄まさないと聞こえないほど、消えてしまいそうな声でユキは言った。
それほどまでに、ユキは私たちで作ったRe:valeを大切に思ってくれていたのだ。
「わかってるよ、ユキ...。でも、もうRe:valeは私たち3人のものじゃない...。千と百くんのものだよ...!」
「さくら...」
私の言葉にお兄ちゃんも深く頷いている。
そう。ブラホワで総合優勝をしたのも、Re:valeがここまで人気になったのも、千と百くんが2人で作り上げたRe:valeなのだ。