第11章 Episode 10
その時の悔しくて泣きそうなユキの顔は、今でも鮮明に覚えている。
悔しい、と零したユキにお兄ちゃんはこう言った。
「千が否定されたって、千の歌が否定されたことにはならない。千が愛されたって千の歌が愛されたことにはならないように」
「おまえがどんなにダメな奴でも、おまえの歌はおまえにしか作れない。俺もさくらも聴いていたいよ」
そしてお兄ちゃんは提案した。
『未完成な僕ら』を完成させること。次のライブから演奏をやめてボーカルだけにすること。
「おまえは曲に思い入れすぎる。出来たものからは、心も手も離すんだ。そのために、曲と距離を置こう」
「......演奏しないってことか?ステージに突っ立って、ただ歌うだけ?タンバリンでも叩くのか?」
「いや、踊ろう。アイドルみたいに」
アイドルとしてのRe:valeはこうして出来上がった。
次々とユキが切り捨てていたため、ずっと決まらなかったメンバー問題もこれで解決した。
「さくらは?彼女も踊るのか?」
「いや、さくらには作曲と事務作業を手伝ってもらう。あとはCDでのコーラス」
「なんで!」
お兄ちゃんの言葉にユキが噛み付く。
きっとお兄ちゃんは気付いていたんだと思う。私への嫌がらせがあること。
それをユキが知れば、ユキが責任を感じて自分を責めてしまうこと。
私はユキに歌っていて欲しかった。そして、それはお兄ちゃんも同じ気持ちだった。
「大丈夫だよ、ユキ。ステージに上がらなくても今まで通りだから。私はこれからも3人でやっていきたい」
「......わかった」
そして、Re:valeを結成して3年経った頃、その頃に初めて百くんの存在を知った。
きっかけは一通のファンレター。
「なぁ!このファンレター、俺が貰ってもいい?Re:vale宛だけど」
「...眠い。いいよ」
「お前も読んでみろよ!絶対に感激するよ!」
「ふうん。好みの女の子の写真が入ってた?」
「男の子だよ。さくらが受け取ったんだけど、俺らと年が近そうな子だったって」
「へぇ...貸して」