第4章 Episode 3
「さくら君、万理くん、おかえり」
社長が出迎えてくれると、事務所にはIDOLiSH7のメンバーが揃っていた。
何かあったのかと思って、傍にいた一織に尋ねると、IDOLiSH7のこけら落としへの出演が正式に決まったと知らされたようだ。
「すごい!すごいよ!おめでとう!!」
「私たちも、まだ信じられなくて...」
「夢見心地な訳ね。それもそうか」
一織の肩を叩くと、一織は少し驚いた顔をしたがすぐに笑顔になった。
その日はIDOLiSH7のお祝いということで、みんなで出前を取ってささやかな宴会をした。
全員が酔いすぎないうちに宴会はお開きとなり、翌日からまたいつも通りの日常に戻っていた。
私は曲のアイディアが舞い降りて来たため自宅に籠ることが多くなり、数日間事務所に顔を出すこともしなかった。
「あれ、陸?」
数日ぶりに事務所へ顔を出すと、そこには暗い顔をした陸がいた。
陸は私に気が付くと、ぱっと表情を変えたが、その無理をして作った表情は逆に痛々しく見えた。
「陸、時間あるならご飯でも行かない?お腹空いたから付き合ってほしいんだ」
「あ、わかりました。大丈夫ですよ」
普通に誘っても断られてしまいそうで、私は陸が断りづらそうな誘い方をした。
陸は少し迷う素振りを見せたが、承諾してくれたため私たちは事務所近くの定食屋さんへ向かった。