第4章 Episode 3
「何かあった?」
単刀直入に切り出すと、陸は少し体を震わせたが、ここ数日であった出来事を話してくれた。
今後更に忙しくなるスケジュールや、花粉などといった要因と陸の体調を考慮して、一時的にセンターを陸から一織へ交代すること。
TRIGGERとの共演のリハーサルで体調を崩し、そのことで兄である天に厳しいことを言われてしまったこと。
「オレ...みんなに迷惑かけてるな、って」
「いいんじゃない?」
「え?」
私の一言に下を向いていた陸が目を丸くして顔を上げた。
「だから、迷惑かけてもいいじゃん。迷惑かける相手がいることは有難いことだよ。それに、厳しい一言を言ってくれるお兄ちゃんがいるのも、すごい有難いことじゃん」
「さくらさんは...万理さんに迷惑かけたり、厳しいこと言われたりしますか?」
「うん。なんなら迷惑かけることなんて日常茶飯事かな。仕事に関しては厳しい一言はキツいなって思うけど、後から思えば私の為に言っくれたんだなって思えるし」
「そっか...」
そう呟いた陸の表情は事務所で見た顔とは見違えるように明るかった。
アドバイスらしいアドバイスはしてあげられないけど、話くらいならいくらでも聞いてあげられる。
グループにはグループなりの悩み事が尽きないのだろう。少しでも解決の手助けになれるのなら、私はいくらでも努力は惜しまない。
「ほら、冷める前に食べちゃおう」
「はい!」
そしてその数日後、センターが陸から一織へと代わった曲が発表され、ライブは無事成功を収めたのだった。