第1章 報われない。 -そらる-
「まあ、そうか。紗奈さんにはお迎えが来るんだよね。なんか仕事で嫌なことでもあった?」
いつもの調子は変わらず、ちょっと低めの優しい声で聞いてくる。
なんだか涙が出てきた。
『んぐっ、んっ、お迎えはもう、こないんれす、き、きょうっ、別れたんです、うっ、』
目をまん丸にしてこっちを見るそらるさん。
「え、そうなの?ちょっと前まで幸せそうにしてたのに」
『ふっ、えっ、んん、ううっ』
なんだか思い出してしまって涙が止まらない。
こまった顔でそらるさんは私を見る。
「…じゃあ紗奈さん、1人で帰るの?」
『ひぐっ、そ、そうれす、ひとりれす、』
「…しょうがないなぁ……」