ここはシリーズif短編【HUNTER×HUNTER】
第4章 上司はイルミさん
カウンターだけの店を見渡せば客は私達以外に上品な老夫婦だけだった
「コースで。」
と短く言った上司をチラリと見遣ると「何飲む?」と聞かれたのでチューハイを頼んだ
おでんにコースが存在した事実に驚愕して呆然としてしまうが、運ばれて来たお酒のグラスを促されるまま合わせる
「お疲れ」
「お疲れ様です!」
日本酒を喉に流し込む上司をまじまじと見てしまう
というのも、何時も昼休憩は社外に出て行く上司
従って彼の食事風景を見た事が無く
食事をするというごく当たり前の事すら想像出来ないでいるのに一緒に食事だなんて意識すればする程緊張した私だが時間が経つにつれてアルコールが緩和剤になった
「めっちゃ美味しいです!」
「でしょ。」
運ばれて来るお料理はおでんのイメージをがらりと変える一品ばかりで
素材ごとに薬味やタレが変わりどれだけ食べても飽きが来ない
さえずりやコロ等の鯨肉のおでんなんてのも運ばれて来て人生初の味に感動すら覚えていると
「神崎さ、今朝転んでたでしょ。」
「っ……はい」
上司は何故か私の恥ずかしい出来事を口にした
「ゲートにも引っ掛かってたし」
「……ゲートは……私知らなかったんです……今まで知らず知らずに右ゲート使ってたけど……」
「知らずに使ってたの?じゃあ……ある意味奇跡だね。」
「………はは」
突然の話題に乾いた笑いを漏らす