第1章 真島という男
一先ず中道通りに戻って、裏道を歩く事にした雅美。
メイン通りから少し離れてるせいか薄暗い感じはするが、それなりに人通りはある。
あの蛇柄のジャケットを目印に雅美は辺りを見回しながら歩き始めた。
探しながら何故自分はこんな事してるんだろうとふと脳裏を過ぎる。
真島の事が気になるのはもちろんだが、
本当は……――!
「お嬢さん」
背後から声をかけられて、肩をポンと叩かれた。
雅美が後ろへ振り返るとそこにはスーツを着た中年男性2人組が雅美を見つめている。
2人ともニコニコと笑っているが目は笑っていない。
「あの…何か……?」
「さっきからキョロキョロしてるけど誰か探してるの?」
男性達はいかつい格好をしていて、どう見ても普通の人じゃない。
「あ、別に……」
雅美は急に怖くなって、その場から逃げ出したくなった。
だが肩を掴む男性の手にぐっと力が入り、振り切る事も出来ない 。
「もしかして仕事探してるの?だったら俺達がいい所紹介してあげようか」
「仕事……?」
「そう。一晩で50ぐらいもらえるよ。いや、お嬢さん可愛いから頑張れば100はいくかな?」
雅美は左右の男性を交互に見ながら冷や汗をかいた。
男性は表情を変えず笑ったまま、淡々と話を進める。
その慣れた口調とペースに雅美はどんどん追い込まれてしまう。
「とりあえず事務所に言って詳しい話しようか」
「あの、私別に……!」
「大丈夫だよ。逆らわなければ痛い思いしないから」
雅美を逃がさんと、男性が左右に立ち腕を掴んで逃げ場を無くす。
自分の身に振りかかった最悪な状況に思わず背筋が凍った。
このままいけば間違いなく事務所と言われる怪しい場所に連れて行かれるだろう。
そうしたら最後、普通の日常にはもう戻れないかもしれない。
「離してください……!」
雅美はどうにかしようとして体を動かすが、男性2人の力の前では何の意味もない。
「暴れたら……、どうなるかわかるよな?」
「……」
頬に大きな切り傷がある男性の口調が先程と違って、ドスの効いた声色に変わる。
そして目つきが突然悪くなった。
自分の顔色が一気に青ざめていくのが痛い程感じる。