第12章 卵の君
「国木田君にも可愛い知り合いが居たんだねぇ。」
『そっ、そんな!とんでもないです!』
「何を莫迦な事を云っている。ただのスーパーの店員と客だ。」
「ふーん。ところでさ、此の子理想に結構当てはまってない?」
「話がややこしくなる!いいから貴様は黙っていろ。」
其処で夕方のチャイムが鳴る。
烏と帰りましょう、と云うアレだ。
そして私は重大な事を思い出す。
『いけない!仕事に戻らなきゃ!えっと、ではまたお待ちしていますね。国木田さん、と……』
「太宰治だよ。」
『太宰さん!では!』
手を振ってくれる二人に手を振り返したところで急いでお店に戻ると先刻レジを代わってもらったおばちゃんから其の様子だと見つかったみたいだね、良かった良かった。と云われた。
私は返事をすると元の業務へと戻ったが何故か集中することが出来なかった。