第11章 招かれた客
「……はァ!?首筋にキスマークだ!?」
「はい。先刻書類を渡しに来た時に姐さんが見たそうで。其れを紅葉の姐さんに知らせ確認の為に駆け付けた、と云う訳です。」
「じゃア先刻騒がしかったのは敵襲じゃなくてアンタらかよ。」
一気に脱力感が襲いかかり机に肘を付けて頭を抱え込む俺に紅葉の姐さんは淡々と答えた。
「じゃから敵襲では無いと云っておるであろう。」
「其の前に立原も止めろよ。」
「いや、止めたんですけど…」
「で、ワンナイトですか!?如何なんですか!?」
「其処そんなに興味有るか?つーか樋口、手前ェ伽羅変わり過ぎだろ。」
「嗚呼私もワンナイトで良い、ワンナイトで良いから…」
「あー、逝ったな。姐さーん。帰ってこーい。」
遠い目をして何処かに逝った樋口を立原が揺さぶっているのを見ていると何時の間にか応接用の机の上に人数分のお茶が用意されていた。
「まぁまぁ、折角じゃ。皆でお茶会とでもいこう。」
紅葉の姐さんの声をきっかけに失礼します!と樋口は姐さんの横に、立原は俺の横に腰を掛ける。
「先ず云っておくがワンナイトじゃねェ。ちゃんとした彼女だ。……樋口、お茶を吹くな。俺に彼女がいるのがそんなに可笑しいか?」
「いっ、いえ!滅相も御座いません!!ただ恋愛に興味無さそうだったので意外でして…。」
「そうじゃなぁ。中也と云えば太宰しか思い付かんぐらい女っ気が無かったからのう。」
「姐さん、俺から彼奴を連想するのは止めてくれ。」
「何時から付き合ってるんです?」
「三年前ぐらいだな。」
「へー。じゃあ長いんですね。同棲してたり?」
「あァ、一緒に住んでるぜ。」
「じゃが相手は一般人じゃろ?ちと危ないんじゃないのかえ?」
「彼奴も異能力者で体術も筋が良い。一応のところは大丈夫です。」
「ではマフィアに勧誘しないんですか!?」
「姐さん恋バナしたいだけだろ。」