第11章 招かれた客
愛理より早く目が覚めた俺は隣に或る可愛らしい寝顔を存分に楽しむと朝の支度を済ませる。
トーストにバターを塗りスクランブルエッグとベーコンを焼きコーヒーを飲みながら朝御飯を食べていれば思い浮かぶのは矢ッ張り愛理の事で。
昨日は無理をさせすぎちまった。
確か今日は休みだと云っていたから問題はねェだろう。
そういや今日は青鯖野郎と中島が来る日だ。
断らねェとかお人好しにも程が或る。
まァ其処に惚れ込んだって云うのも或るが…。
出逢った時もそうだ、あのまま隠れて様子を見ていれば俺が敵組織を壊滅し彼奴は何もせず任務を遂行出来た筈。
なのに俺を守る様に応戦した上でその後わざわざ丁寧に説明迄する始末だ。
そんな愛理に柄にも無く一目惚れをしてアタックし続け今に至る訳だが。
食べ終えた食器を洗うと先刻用意した愛理の朝御飯の横に書き置きを残し、気持ち良さそうに寝ている彼女に口付けをして、行ってきます。と告げる。
出社し先程樋口が届けに来た書類を確認していれば何やら廊下が騒がしい。
敵襲か、等と思えば叩敲と共に姐さんの声が聞こえ部屋に入る様に促す。
「敵襲ですか?」
「いやあ、お主を見に来ただけじゃよ。……ほう、樋口の云う通りじゃな。」
何時もの様に着物の袖口で口を隠しながら笑う姐さんの言動に疑問を抱いていると間もなく樋口と立原がやって来る。
「はいっ!此の樋口に目の狂いは有りません!」
立(頭は狂ってるけどな。)
「……は?手前ェ等まで何なんだよ。」
「中也、お主わっちに云う事は無いかえ?」
「云う事……ですか?報告する様な事は何も…。」
「嗚呼、羨ましい。私も先輩に…!!」
「此れ以上場を乱すなよアンタ。」
各々好き勝手に話す事に苛々しながらも必死に報告し忘れた事が無いか心当たりを探す。
が、何も無い。
「矢張り無いかと。」
「真逆っ、ワンナイトラブですか!?」
「だから乱すなって。」
「何じゃ、お主も漸く身を固めたかと思ったんじゃが一夜限りか。」
「いや、紅葉の姐さんもノってるし。」
「……何なンだ?説明してくれ。」
此の不可解な状況に苦しむ俺は唯一の常識人で或る立原に説明を求めた。