第11章 招かれた客
-次の日。
「愛理ちゃん、昨日はお盛んだったのかい?」
『はぁ!!?』
真面目に事務作業をしていると、本人曰く“真面目に仕事をしないことをしている”らしい太宰さんが隣の席に着き漸く仕事をするのかと思いきや発した言葉は其れだった。
『何なんですか、藪から棒に。』
「いや、ねぇ?蛞蝓って噛むんだなと思って。」
『………………あぁ!!』
彼の視線の先を辿れば其処は首で、鏡で確認すれば紅い花びら。
あれだけ目立つ処には付けないでって云ってるのに!
敦君なんてこんな会話だけで顔赤くしちゃってる。
青少年には刺激が強いとは云え流石に初心すぎるだろう。
あ、国木田さんも顔赤くして震えてる…。
「私の前で良い雰囲気にならないでおくれよ?」
『人前でそんな事はしませんし、嫌なら家に来なきゃ良いじゃないですか。』
「其れは其れだよ。ねっ、敦君。」
「えっ、あ、はい?」
『敦君、話分かってないのに返事しちゃ駄目だよ?何されるか分かったもんじゃない。』
「そうですね。気をつけます。」
『うん、可愛い。』
「ええっ!?私は?」
『「「憎たらしさしか無い。」」』
「国木田君は分かっていたけども愛理ちゃんと敦君迄…。」
「そう云う事だ、さっさと仕事をするんだな。」
国木田さんから首根っこを掴まれ文字通り引き摺られた太宰さんが椅子に座っていたのはたったの十分だった。