第11章 招かれた客
『ねぇ、中也。』
「ん?何だ?」
夕食後、ワインを嗜みながらソファーにもたれ掛かる中也に話しかけると普通に返事がくる。
どうやら酔っ払ってはいない様だ。
『次の休み敦君と太宰さんがうちに来るって。』
「はァ!?断れ。」
『勿論そうしたよ!でも太宰さん敦君にお願いさせてきたんだもん。……あの顔には負ける。』
「だったら敦だけで良いじゃねェかよ。」
『バラ売りはしてないんだって。』
「大体鯖と虎だろ?青鯖野郎なんか喰っちまえってンだ。」
『虎って鯖喰べるの?肉食動物じゃないの?え、敦君肉食なの?草食であるべきじゃない?嫌だ、なんか嫌だ……。』
「落ち着け!喰わなくても思いっきり噛み付いてくれりゃあ良い。」
『じゃあ私は中也に塩をかけるね。』
「オイ。手前ェそりゃ如何云う意味だ。」
『塩かけたら溶けるんでしょ?』
「溶けねェよ!!」
洗い物が終わった私はキュッと蛇口を閉めると自分の分のワイングラスを持って隣へ腰を掛ける。
それに気付くと彼は当たり前の様にグラスにワインを注いでくれた。
「そしたら俺からは有りっ丈の愛を送ってやる。」
『んっ。…いきなりキスしないでよ。』
「いい加減慣れろ。」
『なっ、慣れる訳…な……いでしょ!」
幾度となくキスをしてくる中也に翻弄されてしまう。
ずっと一緒に居たって此ればかりは慣れない。
だって好きなんだもの。
未だに胸が高鳴ってしまう。
なんて考えているとキスは段々と深いものに変わり更に頭が働かなくなる。
「なンだ?もうギブか?」
『中也こそ。エロい顔してる。』
「手前の溶けた顔見てそうならねェ方が如何かしてる。」
『んっ……!もう!変なところ触らないで!』
「其の顔絶対誰にも見せるなよ。」
『見せる訳無いでしょ!』
「なら良い。……よし、行くぞ。」
云うや否や私をお姫様抱っこして彼は寝室へと足を踏み込んだ。
……ワイン、未だ一口も飲んで無いのに。