第9章 四月莫迦を君と 其の四
「昨日はお楽しみだった様だね?」
『え?』
「蛞蝓からね、こんな写真が送られて来たのだよ。」
私は治が差し出した携帯電話を覗き込むとハッとした表情を浮かべ後ずさる。
「私じゃ不満だったかい?此れからはもっと満足させてあげるよ。」
『いっ、いや、そう云う訳じゃ…「じゃあ如何云う訳?」』
ジリジリと詰め寄って来る治に恐怖を抱いていると急に探偵社の扉が騒々しく開かれるや否や黒い影が此方へやって来る。
「愛理、忘れモンだ。」
其の黒い影は中也さんだった。
貴方仕事の筈では…?
差し出された物を見ると私が何時も付けているピアスだった。
何故中也さんが?
嗚呼、治の顔がますます怖くなっていく…。
私はもう既に計画を決行した事を後悔していた。
『あっ、ありがとう。』
「ねぇ、中也?君なら如何云うことか説明出来るかい?」
「あァ?如何もこうもねェだろ。見りゃ分かんだろ。」
「ふーん。愛理、私は許さないからね。」
『ごっ、御免なさい!!』
「別に謝るこたァねェだろ。此奴も此奴で女に声掛けてンだ。云われる筋合いはねェ。」
「君が私達の事に首を突っ込む筋合いも無いよね?」
「俺が昨日慰めたンだ。其れで充分だろ。」
「一時の気の迷いだろう?」
「愛理は手前と居るのは疲れたって泣いてたンだよ!本当に好きならもっと大切にしやがれ!其れも出来ねェ癖に中途半端な事してンじゃねぇ!!」
そう告げると中也さんは治に殴りかかる。
何時もなら軽々と避ける筈なのにそうはしなかった。
嗚呼、もう段々事が大きくなっていく…。
『あのっ!!』
「何だい?」
『今日は四月莫迦の日なんです!!其れで、治を騙してました!だから中也さんとは本当に何にもないんです!御免なさい!!』
「うん、知ってるよ。」
『……は?』
「中也、私は殴るフリって云ったよね?痛いんだけど。」
「フリなんてつまンねェだろ。どうせなら本格的じゃねェとなァ?」
『は?え?……あの、如何云う事ですか?』