第9章 四月莫迦を君と 其の四
『乱歩さーん!』
乱「ん?あぁ、明日の事だったね。何か良い案は……浮かんで無いみたいだね。」
『そうなんですよ。色々考えたんですけど。』
乱「じゃあ思い付く限り云って。」
『求婚!』
乱「駄目。喜んで終わり。」
『入水したふり!』
乱「一緒に入水する。」
『自殺志望の美人を連れてくる!』
乱「其れも喜んで終わり。」
『芥川君を連れて来る!』
乱「逃げるね。」
『中也さんを連れて来る!』
乱「其れも同じ。」
『じゃあ朝帰り!』
乱「……いいんじゃない?」
『敦君と朝まで居たって事にして実際は与謝野さんの家で良いですかね?』
乱「いや、弱い。素敵帽子君だね。」
『……成る程。ありがとうございます!』
乱「約束忘れないでよー。明後日からだからね!」
『えぇ、勿論!』
乱「成功すると良いね。」
乱歩さんはニヤリと笑うと机の上にあった奇妙な色のお菓子を練り始めた。
それから私は与謝野さんに今晩泊めてもらう様に、中也さんには口裏を合わせてもらう様にお願いした。
勿論二人には他言無用にして或る。
-夜。
私が寝ているふりをしている処を写真で撮ってもらい其れを中也さんに送り其れをまた治に送ってもらう。
此処まですれば完璧だろう。
後は明日の私の演技力次第!!
-次の日。
朝起きると一件着信通知が届いていた。
勿論相手は治だ。
其れとは別に中也さんから写真送っておいた、とメールが着ていた。
治がどんな反応をするかワクワクしながら探偵社に行くと何時もより静かな気がしてふいに脚を止める。
何となく深呼吸をしていつも通り出社する。
『お早う御座います!……って、え?』
驚くのも無理は無い。
扉を開けた先に治が仁王立ちして立っているのだ。
微笑みながら。
絶対に怒っている筈なのに微笑んでいるのが逆に怖い。
いや、国木田さん、敦君、普通に仕事してないで助けてよ。
絶対に見て見ぬ振りしてるよね?