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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第4章 オフィーリア




『……成る程。乱歩さんからこの時間に来るように云われた訳ね。』

「はい。明日のお菓子はクッキーが食べたいそうで…。早目に伝えた方が良いんじゃ、と云ったんですけどこの時間じゃないと駄目だと怒られちゃって…。」


図々しくも愛理さんの家に上げて貰い、その上お茶とお茶菓子までご馳走になっている僕は事の一部始終を話し終えた。
すると愛理さんは顎に手を当て考えること数秒クスクスと笑い始めた。


「如何かしたんですか?」

『ふふっ。敦君、嵌められたのよ。』

「ええっ!?何で僕が!?」

『其れはお昼の時の話と関係あるからね。乱歩さんなら全てお見通しでしょうから。』


お昼の時の話と云えば矢張り愛理さんのあの不可解な動揺だろう。
でも其れと僕に一体何の関係が?


『私ね、昔お付き合いしてる方が居たの。』

「……はい。」

『其の人は私の事を綺麗だ、美しい、君が居れば他に何も要らない、なんて云って毎日の様に愛の言葉を囁いてくれた。でもね、私見ちゃったの。彼が他の女性と寄り添って歩く姿を。』

「……。」

『何の気無しに聞いたわ。屹度誤解を解いてくれるのだろうと思ったけど違った。彼は“君は確かに美しい、でも君と居るのは退屈なんだ”って悪怯れる素振りも無く云われたの。其の彼とはすぐに別れたんだけどまた違う人とお付き合いしていた時も似た様な事を云われちゃって、私恋愛するのが怖くなっていたの。太宰さんには前以て話していたから良かったんだけど乱歩さんが知っているのには予想外で驚いちゃって…』


「そんな事が有ったんですね…。話してくれて有難う御座います。僕が云うのも何ですけど僕は愛理さんと一緒に居てとても楽しいです!!些細な事で笑ってくれるし、何より周りの人達の笑顔を見て愛理さん自身が笑っている事がとても素敵だと思います!!僕は……、僕はそんな愛理さんだから好きになったんです!!」


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