第3章 夢
「で?どんな男なンだい、其奴は。」
『お洒落で強くて……優しいです。』
「優しい上に強いんですの!?それは大事ですわね。守って頂けない殿方なんて牙の無いライオンと一緒ですわ。」
あれからあれよあれよと云う間にうずまきに連れてこられ、半ば尋問に近い女子会が開かれていた。
「でも太宰だって優しいだろう。」
「そうですわよ!何時も恋人同士の様に寄り添っていますし相思相愛かと思ってました。」
『太宰さんとはそんなんじゃないんです。慕っている、というか…』
「本当にそれだけですか?」
ナオミちゃんの言葉が胸に刺さる。
それだけな訳がない。
出来ることならば恋人として側に居たい。
でも太宰さんは?
私なんて唯の気まぐれで拾ったに過ぎないのに勝手にそんな事を思われても迷惑だろう。
彼ならば女性を選び放題だと云うのに私を選ぶこと等到底有り得ない。
屹度今も綺麗な女性に声を掛けているだろう。
いや、それだけじゃなく関係も持っているのかも知れない。
考えれば考えるほど自分と彼の差を感じてしまう。
「何を考えているのか知らないけどねェ、後悔しても遅いんだよ?特に妾達は危険と隣り合わせの仕事をしてるんだ。何か有ってからじゃ間に合わないよ。」
「口にしなければ分かりませんわよ!お互いちゃんと向き合うべきですわ!」
『二人ともありがとう。……それでも私は、伝えない。後悔したとしても絶対に伝えないと決めたんです。』
「そんな……。」
『ナオミちゃん、与謝野さんもありがとうございます。でも彼なら忘れさせてくれるかも知れない、そんな気がするんです。何の根拠も無いですけど。』
「そうかイ。結果教えておくれよ。却説、そろそろ仕事に戻るとするか。」
与謝野さんの言葉をきっかけに女子会を切り上げ仕事をする為に探偵社へ戻るや否や国木田さんの怒鳴り声が聞こえる。
「この包帯無駄遣い装置が!!しっかり仕事をせんか!昨日の報告書が未だだろうが!」
「今日はやる気が出ないのだよ〜。明日から頑張るさ。」
「お前がやる気が無いのは何時もの事だ。全く、どれだけ俺の予定を崩せば気が済むのだ。」
「国木田くんは予定が好きだね〜。」
うん、いつも通り。
私もいつも通りで居ればこの関係が崩れることも無いだろう。