第19章 海月
『——————ごめん、中也。』
何故二頁にも渡り私は中也に謝っているのか。
勘の良い方はお分かりだろうが、あのまま治に敵う筈も無く見事に私は白旗を上げたのだ。
そしてあろうことか中也には「君が彼シャツなんてさせるから悪いのだよ。」と何時入れたのか分からない連絡をし、中也は可哀想なことに朝まで自分の家に帰られなかった。
中「だからってなァ……。そう云うのは自分の家に帰ってからやれ。」
『逆らえなかったんだもん。』
太「何云ってるの?愛理も途中からノリノリだったじゃない。」
『ッ!?そう云うことは云わなくていいの!!』
世の中の大半の人が起き始める頃、私はせめてもの償いだ、と朝食を作っていた。
朝はパン派で或る彼の為に作ったのはベーグルにハムやサラダを挟んだもの、スクランブルエッグ、フルーツ。
陽に当たる前に柑橘類を取るのは良くないと此の前テレビで観たのでオレンジは避ける。
太「うん。美味しいよ。」
中「おゥ、何時食っても手前の飯は美味い。今日は卵甘めだな。」
『一寸身体が糖分を欲してて……。』
太「汗をかいた後には塩分が良いと云うけど。」
『治は黙ってて!!』
何故私は朝っぱらから疲れているのか。
久しぶりの休日ぐらい清々しい朝を迎えたかった。
………あ、自分の分のフォーク忘れた。
渋々と立ち上がろうとした私は目の前に差し出された物を見て動きを止める。
中「ほら、使え。」
『え?でも中也も使うでしょ。』
中「俺はもう使わねェ。」
云われて中也のお皿の上を見るとベーグルは残っているもののフルーツやスクランブルエッグ等フォークを使う物は一切残っていなかった。
中「分かっただろ?」
『流石相棒!!中也好き!………否、尊いよ!!身長低くてもその漢らしさでカバー出来てる!!』
中「五月蝿ェ!!手前も同じ身長だろうが!」
『チワワって云われたもんねー(笑)』
中「云われてねェ!!!」
貰ったフォークで食事を始めると先刻まで静かにしていた治が、ねぇ。と誰に云う訳でもなく話し始める。
太「それって一週間前の大男の話?」
『そうだよー。』
中「……一寸待て、何で手前が知ってンだよ。」