第19章 海月
『ごめん、中也。少しの間二人にしてくれる?』
中「嗚呼。外出て来るな。」
『ありがとう。』
何時もの外套を纏い帽子を被った中原は愛理の頭を撫でると、太宰の元へ行き彼にしか聴こえない声量で、しっかり伝えろよ。とだけ云い残し寝室を出て行った。
其れを確認した太宰はしかと愛理の眼を見る。
太「私はね、君が思っている以上に君のことを好きみたいだ……。毎日声を聞きたい。毎日逢いたい。毎日触れたい。其れを私ではない誰かが叶えているのだと思ったら堪らなくてね。つい愛理に当たってしまった。ごめん。」
『私こそごめん。治の気持ち考えてなかった。今日中也に云われて初めて気付いたの。こんなにも愛されてるのに何ふらふらしてるんだろうって。私も、治のこと好きな————ッ!!?』
まだまだ伝えたいことは沢山あったのに言葉に出来ないまま終わってしまう。
何故なら治が唇を塞いだからだ。
始めは触れるだけだったものが段々と貪るような口付けに変わっていく。
私も其れに応えるように必死に舌を絡ませる。
太「ふふっ、顔真っ赤だよ。可愛いね。」
離れてしまった唇が寂しくて、余裕そうな治の顔が悔しくて、私はもう一度自分から触れるだけの口付けをした。
太「………本っ当に、君は私を如何したいの。」
貴重な赤らめた顔を堪能する暇もなく舌と舌が絡まり合う。
かと思えば急に治から肩を押され思わず後ろに倒れ込む。
太「ねぇ、蛞蝓のベッドでするのも佳いかもね。」
『なっ、何云ってるの!此処でする訳ないでしょう!』
治は故意に私をベッドに押し倒したのだ。
そして此処は中也の家。
流石に人の家で行為に及ぶ訳にはいかない。
太「恨むなら自分を恨むのだね。」
『私何にもしてないっ!』
太「散々煽ってくれたじゃないか。蛞蝓にまでこんないやらしい姿見せて。しかも此れ……彼の服でしょ。其の点だけは頂けないから今から私のシャツに着替えて。」
所謂彼シャツ状態で或る私の露わになった太腿をいやらしい手付きで撫でる。
『いや、絶対着替えるだけじゃ済まないでしょ!?』
太「最終的には着替えることに成るよ。」
ニコリと笑った彼には到底逆らえる筈も無かった。