第19章 海月
ナ「にっ、兄様……此の方って…。」
谷「……うん。間違いないよ。」
全く以って検討も付かない会話の説明をしてもらう為に、会ったことが或るのかい?と問う。
すると返ってきた言葉は信じ難いものだった。
ナ「一週間程前に兄様とお出掛けした時にレストランに入ったんですの。店内は混雑してたようで丁度私達が座ることで満席でした。
其れを聞いていた後から来た柄の悪そうな男三人組が、
“こんなお子ちゃまが入れて俺らは入れれねぇって云うのかよ!客を選ぶんだな、この店は!”
などと云って騒ぎ始めてしまって…。
他の方の御迷惑にもなりますし、兄様と他の所へ行きましょうと話していると店内から黒い服を着た男女がその三人組の元へ行ったんです。其の方達がとっても素敵で……!
中「黙って話聞いてりゃ五月蝿ェ野郎だな。お陰で美味い飯も台無しだ。」
男「何だお前は。小さい癖に威勢だけは良いんだな!!隣に居る女と同じ身長とか男として恥ずかしくねぇのかよ!!」
ガハハハと大口を開けて笑う三人組、と愛理。
『云われてるよ、中也!!チワワだって!』
中「おい!!チワワは云ってねェだろ!!」
『じゃあハムスター?』
中「手前ェ本ッ当にハムスター好きだな!そんなに好きなら飼えよ!」
『だから飼おうとしたのに中也がお家壊したんじゃん!!』
中「当たり前だろ!俺の帽子を住処にされてたまるか!!」
最早三人組そっちのけで喧嘩し始めた男女に誰もが何の為に来たんだよ、と思った。
男「お前こそ五月蝿えだろうが!!ほら、店員さんよぉ。早く案内してくれよ。」
店「でっ、ですからその……順番が…」
男「あぁ!!!?」
店「ひっ………!」
『ねぇ、貴方馬鹿なの?物事には順番が或るの。其れが回ってくるまで待つの。此れが出来ない人は人の顔して歩いちゃ駄目だよ。』
男の方へくるりと向き直し真顔で云ってのけた愛理だったが男が黙っている筈が無い。
男「女の癖に………!女はな!!黙って夜だけ鳴いてりゃいいんだよ!!」
カチンときた男は容赦無く愛理へ拳を振りかざす。