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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第19章 海月




中「よっしゃア!!やっと組み立て終わった…」

『うんうん、我ながら良く出来てる。』


拠点内の大ホールは達成感に満ち溢れている。
とても大掛かりになる事が予想された為、大部屋で素麺流しをしようとなったのだ。
無論外は暑いので満場一致で取り下げられた。


『でもさ、空調設備の効いた部屋で素麺流しって風情も何にも無いよね。』

中「それもそうだな。あー、やってる間だけ設定温度を少し高めにすりゃ佳いんじゃねェのか?」

『それ良い!若干暑いぐらいにしてね!』


大ホールを後にした二人は首領とエリス嬢に報告を終えた後、すぐさま帰宅の準備へと取り掛かる。
首領からご苦労様。と労いの言葉と本日の早退と明日一日の休暇を貰ったのだ。
思いもよらない急な休みに二人は暑さも忘れて意気揚々と帰って行った。




















『で、此処に胡瓜と焼き鯖を乗せて完成!』

中「げっ、鯖入んのかよ……。」

『此れは食材の鯖なの!美味しい鯖なの!文句云うなら食べさせないよ?』

中「悪かったから怒んなよ!」

『じゃあおつまみ作って。』

中「手前最初っから狙ってただろ。」

『だって中也の料理好きなんだもーん。』


その言葉に何を作ろうかと自宅の冷蔵庫の中を漁る手がピタリと止まる。


中「……料理だけかよ。」

『ん?勿論中也も好きだよ?』

中「其れは恋愛対象として————


ピーピーピー!!


『ほらぁ、冷蔵庫開けっ放しにするから怒られちゃったよ!?』

中「チッ。タイミング悪ィ。」


舌打ちをした中原は必要なものを取り出すと冷蔵庫の扉を閉めた。
何事も無かったかのように調理に取り掛かる彼を後ろから見ながら愛理は先刻の質問に答える。


『中也は最後の人になるのかなー。』

中「なンだよ其れ。」


何時もより乱雑になる包丁捌きなど気にも止めず調理に集中しているフリを続ける。


『前にも云ったけど治とは結婚って感じはしないよね。矢っ張り其処は中也に劣る。』

中「じゃあ何で彼奴と付き合ってンだよ。」

『今好きだから、だよ。』


即答され押し黙った彼は暫くして、雑念を払いたい。と愛理をリビングに追いやる。
が、どうにも冷や汁に入っている焼き鯖が視界をチラついて仕方がなかった。


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