第18章 拾い者と落し者 其の二
敦「愛理さんを置いていけ。」
虎化した腕で龍之介に襲いかかってきたのだ。
背を向けていたにも関わらずしっかりと羅生門は発動しすかさず反撃態勢をとる。
芥「矢張り一度首を刈らねば分からぬようだな。」
敦「お前みたいな芝刈り機の元に愛理さんをやる訳にはいかない!!」
芥「淺ましい。人虎、貴様は何も分かっていない。」
一進一退を繰り返す攻防戦に私と治はしれっと避難する。
このままでは確実に巻き添えを食らう。
其れだけは絶対に避けたい、と意気投合した者同士遠くから二人を眺め乍らぽつりぽつりと座って話をする。
『治だって全く分かんなかった。』
太「ふふっ。与謝野先生とナオミちゃんに御礼を云わなきゃならないね。」
『それもう化粧じゃなくて加工だよ。』
太「そうかなぁ?元々美しいでしょ、私。」
『自分で云うところが台無し。』
太「……彼はね、君のことを誰よりも大切に思っているのだよ。」
『龍之介もだよ。』
太「君が彼を救うことは出来るけど果たして逆は如何だろう。」
『……私が好きじゃないって云いたいの?』
太「そう云う意味では無いよ。」
向こうでは止むことを知らない物騒な音が鳴り続けている。
其れはもう途轍もなく………
いや、五月蝿いわ。
こっちは治と真剣に話してるんだけど。
しかも君達も割と関係或るんだからね!?
云われた意味を汲み取ろうとするとバキッ!だのドスン!だの。
『ちょっと考え事出来ないんだけど!?静かにしてくれる!?』
芥/敦「はい。」
怒りが頂点に達し八つ当たりするように叫ぶと二人はピタリと静止画の如く動きを止める。
見事なまでの従順さだ、と横に居る治は感心していた。
『治、私はね、誰かを救いたいだとか救われたいだとかそう云う利益の為に此方に着いたんじゃないの。』
太「自分の為とでも云うのかい?」
『そう。』
太「真逆とは思うけどこの前の任務の事で責任を取る心算ではないよね。」
『………はぁ。本っ当にそういう所嫌い。あんたは乱歩さんか。』
太「ふふっ、乱歩さんほど全てが分かる訳じゃないよ。だからこうやって話をしているんじゃないか。」
『もっと謙遜しなさいよ。』
遠くで待て状態だった仔犬二匹はいつのまにか私達の会話が聞こえる位置まで来ていた。