第18章 拾い者と落し者 其の二
敦「愛理さん。社長を始めみんな怒っていませんから!最初はびっくりしてましたけど…。でも!任務中とはいえ人を殺めてしまったことよりも愛理さんが帰って来ないことの方がみんな嫌なんです!!」
敦の熱弁を聞いて私の心は少しも揺らぎはしなかった。
寧ろ疑問点しか出てこない。
まるで宿題の答え合わせをしている先生の気分だ。
『殺人の罪より私が居る方が大事?其れってどうかしてるよ。屹度乱歩さんと国木田にも云われたと思うけど、探偵社員の為には何したって良いの?殺人を犯そうが盗みを働こうが其の罪を問うよりみんなで仲良く家族ごっこでもしたいって事だよね。』
敦「そっ、そういう事じゃあ………」
『同じだよ。社長は人情深いお人だからね。それは私の為を思ってくれての行動は嬉しいけど間違ってるよ。罪は罪。社内で許す許さないの話じゃない。』
すっかり云い返す言葉を失ってしまった敦は俯いて拳を握り締めていた。
其れに見兼ねたように治が話を続ける。
太「君なりのけじめ、なのだね。」
『そう。それに本当に私の我儘でもあるの。』
太「ふーん。」
よいしょと立ち上がり敦の横に行くとぽんと頭に手を乗せる。
太「まぁこの子が彼の欲しいもの全てを持って行ってしまうのは良くないか。」
『だいぶ時間を掛けた交換ってところだね。』
私はじゃあね。とだけ告げ、先刻の戦闘のせいですっかり瓦礫の山となってしまった部屋から去る為背を向けた。
敦「芥川っ!!………愛理さんを、頼んだぞ!!」
芥「ふっ。云われずとも。」
微笑んだように見えた龍之介と私は迷うことなく、しっかりとした足取りで建物を後にした。
END
<作者より>
とても長くなってしまいました。すみません。
思いのほか僕ちゃん書くの楽しくなってしまって…。
停戦状態後の続きのお話も書けたらなぁと思っています!