第18章 拾い者と落し者 其の二
黙々と歩き続けること数分。
いかにも厳重な扉の前に立つと治は脚を止め此処だよ、と呑気に云いのけた。
太「おぉーい!開けてくれ給え!」
小学生の魔法の言葉、開け胡麻!とでも云っているみたいに中に居るであろう人に叫ぶ。
わざわざ叫ばなくても先刻ポケットから見えた無線機で話したら如何なのよ。
————なんて悪態をついていると扉が開く。
部屋の中に居た人物は思いも寄らない……でも、矢っ張りと云いたくなるような人だった。
?「愛理さん……。」
『敦か。………それと貴方がラビィの親玉?』
「嗚呼、如何にも。横流ししていたのがこんなにも早くバレるとはな!!!」
先刻までの雰囲気とは一転し敵はベルトに差していた拳銃を抜き迷う事なく私に向ける。
「お前は精神操作の異能力持ちらしいな!?どうせ戦闘中に何時も遠くから指を咥えて見ているだけだろう?近距離戦には向かないなぁ?ガハハハハッ!」
『誰が近距離戦には向かないって?』
「ッ!!!?」
一気に間合いを詰め大口から見える金歯を光らせながら阿保みたいに笑う口に銃弾をお見舞いする。
喉に穴が空き呼吸もままならない状態なのに未だ罵倒を続ける心算らしい。
最近の男はお喋りが多いんだから。
敦「愛理さんッ!!!」
『じゃあねぇ〜。』
バンッ
芥「此方C班、任務は完了した。……………嗚呼、直に戻る。」
無線機で各班に報告を終えた彼は冷ややかな視線を“敵”に向けた。
芥「見ての通り、愛理は闇に染まっている。故に連れ戻す事など不可能。」
敦「ほっ、本当は愛理さんだって殺したくなんかなかった筈だ!!なのに……」
『なのに、なんなの?』
敦「えっ…。」
冷たい声で私が反論することが想定外だったのだろう。
敦は水槽の中で餌を求める魚のように口を開け閉めさせていた。
『私は貴方が思っているような人間じゃなかった。ただそれだけ……たったそれだけの事でしょ。』
行こう、と龍之介と共に去ろうとした。
————が其れは阻止された。