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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第18章 拾い者と落し者 其の二




一瞬で身構える私達に目の前の男は薄暗いこの廊下で何時ものように嘘くさい笑みを浮かべた。


「久しぶりだねぇ、愛理?」

芥「太宰さん!!!」

『待って、龍之介。……目的は何?』


今にも突っ込んで行きそうな彼に制止を掛ける。
冷静に考えれば相手は龍之介の師である上に治だ。
手が読めない訳が無い。
其れに治には羅生門を始めとする一切の異能が効かないのだ。


太「目的?此処の親分の護衛に決まっているだろう?」

『そう云う事を聞きたいんじゃない。』

太「じゃあ何?」

『私達がラビィの殲滅任務を遂行するって分かってて如何して護衛を引き受けたのかって事よ。』


云い終えると治は此方に脚を踏み出した。
其れに素早く反応した龍之介は私を背にやり治と対峙する形となる。


太「へぇ?君が愛理の騎士(ナイト)気取りかい?」

『いいから質問に答えて!』


此れ以上治のペースにさせてはいけない。
確実に龍之介が呑まれる。


太「勿論君を取り戻す為だよ。」

『私はもうマフィアに身を置いたことも知っているでしょう?戻らないよ。』

芥「幾ら太宰さんとは云え愛理を連れ行くならば黙ってはおれぬ。」

太「私はねぇ、意外と後輩思いなのだよね。」

『……はぁ?』

芥「………。」

太「芥川君、彼に譲ってはくれないかな?」

芥「なりません。僕のです。」

『ちょっ、ちょっと!!何の話!?』

太「………まぁいいや。とりあえず待ってるから、部屋に行くよ。」


呆れた顔をして先程より早い速度でスタスタと歩き出してしまった。
何この男。
一つとして会話が成り立たないんだけど。
控えめに云って死ね。


太「あだッ!」


せめてもの仕返しにと懐に忍ばせておいた銃の持ち手を背中に振りかざす。
あぁいい気味。


『治、今度サバゲーやろうか。』

………実弾入りで。』






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