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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第18章 拾い者と落し者 其の二




『ごめん……「矢張りそうか。」人の話を最後まで聞きなさいって治に習わなかった!?』

芥「すっ、すまぬ。」


相変わらずシリアスを脱線しそうなところをこほんと咳払いをして元に戻す。


『私恋愛とか慣れてないの。だからどんな反応が正解なのか分からなくて、恥ずかしくてその場から逃げようとしただけ。でもそれで龍之介の事傷付けてちゃ意味ないもんね…ごめん。』


拒否されていたのではない事が分かり安堵した芥川は思わず彼女を強く抱き締めた。


芥「僕も恋愛等と不確かなものは理解出来ぬし不必要だと思っていた。だが今なら気持ちが分かるやも知れぬ。愛理のお陰だ。」

『龍之介…。あのね、私ね、その……ちゃんと!龍之介のこと、好き……だから。ね?』


顔を赤くし眼を潤ませたうえに身長差のせいで上目遣いになった彼女の不意打ちの甘い言葉に理性を総動員で働かせる。
此れ以上顔を直視するのは拙いと更に身体を密着させ肩に顎を乗せる体勢になった。


————はいいが、其れは其れで拙いものが或る。
勤務外だからか何時もは束ねているのを下ろしている為触り心地の佳い髪。
程よく肉付きの佳い身体。
決して大きいと云う訳では無いが此方も程よい大きさの胸。


今すぐにでも離れなければと思っているが本能がそうさせてくれない。
そして抱き寄せた柔らかい身体から伝わる速い鼓動も其れを望んでいない様に思えた。


『龍之介…。』

芥「何だ?」

『お風呂冷めちゃう。』

芥「…………入ってこよう。」


矢張り期待を裏切る愛理であった。


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