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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第18章 拾い者と落し者 其の二




『よしっ!こんなもんかな。』


食卓に並んだのは鮭の塩焼きと出し巻き卵、漬物、味噌汁、白米。
朝食に理想とされる献立が並ぶ、が現在の時刻は深夜十二時。
あの事件から既に六時間は経っていることになる。
寝起きのお腹に重めのご飯は辛いだろうと彼女なりの配慮故の献立だがいかんせん時差が大きい。


『龍之介ー!!!起きてー!!!』


寝室に向かい近所迷惑にならない程度に叫ぶが一向に出て来る気配が無い。
仕方ないと壁にもたれ腕組みをしていた腕を解き彼の元へと脚を運ぶ。


『龍之介ー?』

「ん゛………んぅ……。」

『何その唸り声、可愛いかよ…………じゃなくて!!起きなさい!!』

「………。」


腕を枕にして寝ている為片方だけ見える頬を引っ張るとゆっくりと目を開いたことに安堵するのも束の間、ものすごく不機嫌な顔で此方を見る龍之介。


『えっと………あの、おはよう。』

「嗚呼。お早う。……で、何の用だ。」


理由が或るからわざわざ起こしたのだろう。と云いたげに愛理を凝視する。


『えっと、ご飯出来たから食べるかな?って……。』


尻すぼみにそう云うと芥川はスクッと立ち上がり彼女の横を通り過ぎると未だ湯気が出ている朝食………否、夜食の前に座る。


『嫌いなもの或る?あ、足りなかったら云ってね!おかわり或るから!』


遅れてきた愛理も目の前に座るといただきます。と手を合わせ食事を始める。
其れを見た芥川も同じ様にならい黙々と食べ進める。
特に大きな反応は無かったが、途中で「上手い。」とたった一言呟き頷いたのを見て大いに満足した。











食事を終えた二人に訪れたのは沈黙だった。
食器もそのままにお互いに何か云いたげに言葉を選んでいる様にも見えた。


『あのさ。』


先に言葉が決まったのは愛理。
伏せていた目を上げ真っ直ぐに彼女を見た芥川は何を云われるのかと内心焦っていた。


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