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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第18章 拾い者と落し者 其の二




『うっ…………。』


愛理が目を覚ますと其処は自分の家だった。
何時も羽織っているジャケットは脱ぎシャツとスカート、タイツも履いたままで或る。
朧気な記憶を取り戻そう。
そうする前に見慣れないものが居る事に気付く。


『ふふっ、彼なりに心配してくれたのかな?』


暖かい笑みをこぼしながらベッドの脇に座って眠る彼の背中に毛布を掛けてやった。


『とりあえずシャワー浴びようっと。』


未だ寝ている龍之介を起こさないようにそっと支度をし、浴室へと踏み入れる。
汗ばんだ身体を洗いながら考えるのは彼の事。


何時も仏頂面で表に感情を見せない彼だが屹度私以上に傷ついているに違いない。
だからこそ、その罪悪感に駆られ私を家まで運んでくれた上に看病をしてくれたのだろう。
皺にならないようわざわざジャケットを脱がせ何が或っても良いようにと付きっ切りで居てくれて。


シャワーの栓を止め身体を拭き軽く髪の毛を拭くと服を着た彼女は芥川が未だ寝ていることを確認すると、台所へと向かった。

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