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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第18章 拾い者と落し者 其の二




『めっちゃ————次の日。とかいきそうな展開だけど未だ続けるね?』

芥「何の話だ。」

『あ、いや、此方の話。ねぇ、龍之介。他に私に聴きたい事ある?』


小首をこてんと傾げる眼の前の少女に愛らしい、
————と思うより先に違う疑問が浮かんだ。


芥「何故名を呼ぶ。」

『ん?あぁ、何となく?下の名前で呼びたいなって思っただけ。嫌だった?』

芥「けほっ………構わん。」

『良かった。じゃあ私の事は愛理で。』

芥「愛理か。良い名前だな。」


突然の芥川のデレに驚いた彼女は頬を赤らめ顔を晒してしまう。
そのままで居ると人気が無くなった気がして再度前を見ると目の前にあったのは例の黒い外套であった。


芥「何処か痛むのか?」

『いっ、いや!そう云う訳じゃないから!大丈夫!!』


僅かでは或るが心配している表情が伺える顔で此方をジッと覗き込む。
嗚呼、天然って怖い。と改めて思う瞬間であった。
だが天然の脅威は此れだけには留まらず……


芥「熱が或る様に見えるが。」


彼は愛理の手をグッと引っ張りそのまま握るともう片方の手で顎を持ち上げた。
そのまま顔を背けるな、と云わんばかりにジッと彼女の顔を見る。


コンコン


樋「あ、芥川先輩!樋口です!今後の日程について…………………





おっ……お邪魔しましたぁぁぁぁぁあ!!!!」


扉を開けて入って来た樋口は眼の前の光景に呆然とする。
彼女の頭の中はこうだ。
“恋愛とは無縁の先輩が出逢ったばかりの女性を口説いている。矢張り師弟とは似るものなのか。”


ふと我に返った時にはもう既に廊下を歩いていた。
以前睡蓮の様に美しいと口説いてきた人の事を思い出し乍ら樋口はトボトボと鍛錬室へと向かった。




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